
文京区は千駄木にお住いのY様邸をご紹介します。
千駄木の名前の由来は、雑木林で薪などを伐採、その数が千駄にも及んだからという説や、太田道灌が栴檀(せんだん)の木を植えた地であり、この栴檀木が転訛したとの説もあります。
谷根千とひと括りに呼ばれる谷中・根津と千駄木は、下町情緒あふれる地域として知られています。東京大学が近く、川端康成、北原白秋、高村光太郎、夏目漱石、森鴎外など多くの文人が居を構えたことでも有名です。
千駄木の中でも特に高台の閑静なマンションの扉を開けると、広いお玄関と辛子色の壁面がばっと視界に入り、玉村豊男と篠田桃紅の作品がお互いを尊重し合いながら綺麗に展示されています。広いリビングの先にせり出たベランダがより一層開放感を導き、Y様ご夫妻さながら、爽やかな風の吹き抜ける居心地のいい空間です。家具や照明器具、食器に至るまで、時間をかけてじっくり吟味されているのがわかります。

Kさん(K様と呼ぶべきですが、ご本人がこれをとても嫌がりますので、今回に限りKさんと言わせていただきます)のお住まいは、浅草寺にほど近いとても素敵な2LDKのマンションです。ご本人は「広さもですが、絵を飾る壁が少ないのが、何よりもの悩みです。」と苦笑いされています。
玄関左手の小壁にユトリロのリトグラフ“モンマルトル”が掛けられ、訪問者を迎えてくれます。サクレクール寺院とムーラン・ドゥ・ラ・ギャレットが描かれた小粋な1枚です。玄関前から左右に伸びる廊下は、さながら画廊の展示場。左手には、一昨年サンカイビで絵画の修復についてご講演いただいた小林基輝先生のリトグラフが飾られています。これはやはり一昨年、新潟池田美術館で開かれた『ムリナーリニ・シン絵画展』に際し、小林先生が参考出展された作品で、Kさんお気に入りの一枚だそうです。
廊下右手正面には、ガントナーの油彩(15号)“秋の池”が、鍵の手に曲がった先には、加山又造のリトグラフ“メジロ(3羽の小鳥)”と、ジャンセンのリトグラフ“奉献(Francony社刊レゾネ№401)”が、いずれもひっそりと並び掛けられ、その奥のリビングに導いてくれます。これらは、時々掛け替えて雰囲気の変わるのを楽しんでいるそうです。
リビングの片隅に、ジャンセンの油彩画“王様の選択”と、リトグラフに水彩とパステルで彩色を施した“人形とポリシネル”が掛けられています。“王様の選択”は、作家がご自身のご家族のプレゼントにするために描いたもので、この作家にしては珍しい2号という小品ながら大作の雰囲気を湛えています。“人形とポリシネル”は1984年に制作したリトグラフを元にした作品ですが、元のリトにくらべ手彩色されている分豊かな味わいを湛えています。室内の別の壁にはムリナーリニ・シン(前インド大使夫人)の水彩画が華やかな彩を添えています。
居室1には、ジャンセンの初期のリトグラフ“傘の下の母子(F社刊レゾネ№65)”と織田広喜の油彩画“テラスの風景”が並べて掛けられていました。ただ、この2枚の肌合いがあまり気に入らないようで、近々織田をジャンセンのリトに掛けかえる積りだそうで、“レモン売り( F社刊レゾネ№4)”か“八百屋( F社刊レゾネ№228)”にしようかと考えているそうです。
![居室2[1]](http://www.sankaibi.com/corridor/wp-content/uploads/1-e1333626893375-300x225.jpg)
居室2はKさんご本人の書斎兼寝室で、一面の壁には、ジャンセンの水彩画“野菜のある静物(1962年)”を中心に、ルオーの銅版画“見世物小屋の呼び込み”とピカソのリトグラフ“小さなポットの花束”が並べて掛けられていました。さらに別の小壁を篠田桃紅の抽象が“遥”が飾られていました。どれも野球で言えば4番バッター、とても個性の強い作品なのですが、それぞれ主張しあいながらも、喧嘩せずにうまく調和しているように思いました。
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― 随分いろいろな作家さんの絵を集めていますね、ほかにはどんな作家さんの絵をお持ちですか?
Kさん えぇ、いつの間にか有名、無名の作家さんの作品が増えてしまいました。 10数人の作家さんの作品を楽しんでいますが、サンカイビさん所縁の画家では、吉岡耕二先生、北川健次先生、F・ミアイユ先生でしょうか。
― コレクションの基準はどうお考えになっていますか?
Kさん とくにはないんです。 画廊などで、いろいろな絵を見ているうちに、たまにキラキラッて光って見えてくる作品があるんですね。 そうなると、もうほとんど衝動買いってことになります。 もともと絵画と古書(希少本)は気に入ったらすぐに買うべきだと思っていますから。 一晩考えて翌日行ったらもう売れていた、ということになりますと残念ですからね。 系統的にとか目的を持って収集するわけではありませんので、私は自分をこれまでこのコラムで紹介されてきた方々のようなコレクターだとは、考えてはいません。
― 1番好きな画家さんは?
Kさん それぞれに気に入って買い求めてきたのですから、どの作家さんも好きですが、その中で一人をあげるとすれば、ジャンセンですね。 とくに、40歳代から60歳代にかけての作品が好きで、たとえば、線の一本一本が強さとやさしさを持っていて全く無駄がありません。 背中だけで、その人の感情、生き様を表現できる画家さんはあまりいないのではないですか。 毎日見ていても飽きがきませんし、それどころか日々新たな発見があるんですよ。
― ご自慢の一品は?
Kさん 作品ではないのですが、ジャンセンのイラスト入りのサインが気に入っています。 装画本の1ページに描いていただいたものですが、本の内容ともマッチしていて、素晴らしいなと思っています。 これはもう二度と手にはいらないでしょうね。
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どうやら大分長居をしてしまったようです。そろそろお暇いたしましょう。
世田谷区の無形文化財、ボロ市が立並ぶ、ボロ市通り近くに居を構えるE様邸をご紹介します。
ボロ市の歴史は遡ること1578年、北条氏政の「楽市掟書」により世田ヶ谷城下で始まった楽市を嚆矢とするそうです。江戸と小田原の間にある世田谷宿において伝馬の確保のため、宿場を繁栄させようという目的があったといわれています。
さて、E様邸を5、6年前はじめてお邪魔した時の印象を今でも鮮明に記憶しています。高級マンションのモデルルームのように絵画や家具などのインテリアがとても素敵だったのと、ホテルのように生活感がまったく感じられなかったからです。奥様曰く、「篠田先生の作品を集めているうちに、ものが置けなくなって…。」確かに篠田桃紅の作品は空間を選ぶのかもしれません。
作品を大切に扱って頂いているせいか、作品たちも嬉しそうに輝いて見えました。生活の場であるご自宅をここまでストイックに綺麗に保つのは、なかなか出来ないことです。アッパレ星☆☆☆です。


書家のK様は筋金入りの篠田桃紅コレクターである。ご本人曰く高校生の頃からのファンだそうだ。K少年は、篠田桃紅が単身ニューヨークに渡り、書家から抽象作家へと華々しい転進と遂げ、時の人となったその頃誕生した。(すみません。あくまで推測です。)書を起源として国際的に活躍するアーティスト、篠田桃紅はK少年にとって大変刺激的な存在であっただろう。
真のコレクターとは大変慎み深いものである。いつだったか、篠田桃紅展のオープニングの際、K様を篠田先生にご紹介しようとすると「私はいいです。」とお断りになった。遠巻きに先生を眺めているだけで満足出来るのもファンならではの真理である。
K様のアトリエには、篠田コレクションの中でも特に現在のお気に入り3点が壁面を飾っている。金箔の秀作を中心に左右を金糸で織られたK様こだわりの額装で、調和のとれた大変素晴らしいプレゼンテーションであると同時にK様の作品に対する深い愛情が感じられる。

下馬の閑静な住宅地に佇むN邸のベルを鳴らすや否やボクサー犬のマロンちゃんが元気な鳴き声で出迎えてくれる。玄関に入ると右手の壁には草間彌生の「蝶」が、そして目を落とすと山田浩司の蝶が群生している。水辺で羽を休ませた蝶たちが、舞い上がり羽ばたいていくようにもみえる。展示の工夫によりアーティストのコラボレーションを見事に可能にした。そして2階に上がると、今度は草間彌生の花や南瓜がリビングを華やかに演出している。素敵なアートに囲まれて、優雅な日々を堪能しておられるN様ご夫妻でした。

O様邸をご紹介いたします。作品をお納めするため、お訪ねしたのは桃の節句の頃でした。
東京都内の凝った造りのご自宅には、O様の審美眼で集められた年代、洋の東西を問わない美術品が並んでいます。
若い作家の現代的な作品も数々あり、それらが実に楽しく配置されており、O様の柔らかい感性とお人柄を感じます。
吹き抜けの天井が開放感のある広いリビングにも、絵画やオブジェなどがセンス良く飾られ、心地よい空間になっていました。
その一画に置かれた和箪笥の上に、美しい古いお雛様。
「草上花下」の文字と、うすい桃色の刷毛跡、白い絹の表装パネル――篠田桃紅の作品が、お雛様の上にぴったりと納まりました。

勝どきの高層マンション37階に居を構えるK様邸をご紹介致します。
まずお玄関を通り、廊下をぬけると東京湾が一望出来る大パノラマが広がり、ライトアップされた東京タワーが一際目立ちます。
広いリビングはベージュのシンプルなコンテンポラリーな家具と真っ赤なソファーを基調とし、照明や置物など一つ一つにこだわりを持ったシックなお宅です。
絵画は真っ赤なソファーに合わせて草間彌生の赤いお花のシリーズをお求め頂きました。
展示方法にはアパレル業界でご活躍なさっておられる奥様のセンスがキラリと光ります。