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桜は日本の国花。古事記で「木花之佐久夜毘売」、日本書紀で「木花之開耶姫」(どちらもコノハナサクヤビメと読む)と表記される日本神話の姫の「木花」が桜の花を意味し、「サクヤ」の音がサクラの語源と言われる。コノハナサクヤビメは、ニニギの妻として、ホデリ(海幸彦)とホスセリ・ホオリ(山幸彦)を生んだ姫だ。日本人なら誰しも、自然に、厳しい季節をのりこえた安堵感を抱く桜色。その郷愁は、日本のルーツとも言われる神話に根ざしているのかもしれない。 桜色はピンクのなかま。泉智子さん(ビタミンカラーズ代表・カラーセラピスト)は、著書『幸せになるカラーセラピー』(主婦の友社 1998.6.20)の中で、「ピンク色の壁の不思議」と称して、色の癒し効果にまつわる逸話を紹介している。時代は1970〜80年代。ところはアメリカ。刑務所で凶暴な囚人達をいかにおとなしくさせるかが大きな問題になっていた。映画『カッコーの巣の上で』が話題になり、心や体を病んでいる人々の人権問題に焦点が当てられ始めた時期でもあったため、力でも薬物でもなく囚人たちの情緒安定に役立つものとして、カラーセラピーが取り入れられた。刑務所の無機質な壁をピンクに塗り変えると、荒れていた囚人たちは穏やかになったそうだ。そのわけは次のように分析されている−−「ピンクは、母親の子宮の内壁の色です。人はみな胎児のころ、ピンク色に守られて羊水のなかで安心できた記憶を持っています。だからこそ、人はピンクに包まれたとき、安らぎと落ち着きを感じて、攻撃性は影を潜めてしまうのです。」(同著p.68) カラーセラピーの起源は古代文明期に遡る。古代エジプトの神殿は、科学と医学、両方の役割を兼ね備えていた。各部屋ごとに違った色の光がさし込むように考案され、その光で病気の治療をしたという記録が残っている。空前のヨガブームに伴って注目を浴びているアーユルヴェーダは、古代インドからの歴史を誇る。人間の体質や性格を風・火・水の3つに分けて解明し、この3つに該当する色水や色粉をつかった治療法が民間でさかんに行われていた。古代中国では、森羅万象を木・火・水・土・金の陰陽五行に分類し、それぞれに相当する緑・赤・青・黄・白などの陰陽五行色のエネルギーが、すべての自然現象から人間の健康や情緒面までも左右すると考えられた。そして、古代日本−−奈良の古墳や遺跡から度々出土される漆棺などの朱塗りには、神社の鳥居や巫女さんの赤袴と同じように、悪霊ばらい的な意味合いがある。そもそも生きている人間だけが持つ血の色である赤(朱色)に塗り込めることによって、悪霊を入り込ませまいとする魔よけの意味もこめられていたようだ。古代の遠く離れた人々が、それぞれの方法で色による癒し(カラーセラピー)を生活の中に生かしていた。 ここで、現代に視点を戻そう。花粉症歴18年の私は、桜の季節になると、皮肉をこめて“春なのに〜♪”と唄いたくなる。色について調べるうち、ヒーリングコンサルタント高坂美紀さん(株式会社ハーツ、代表取締役社長)の興味深いアドバイスを知った。「ベージュ」か「深緑」を見たり着たりすると症状が緩和されるのだそうだ。「ベージュ」は肌色に近いため低刺激でありながら程良く明るいので心身をリラックスさせ、ストレスを和らげる。「深緑」は自然な自己治癒力をバックアップしてくれる上、皮膚や粘膜を健康な状態に近づけてくれる働きがある。なお、「白」「黄色」「赤」などの反射が強い色や、刺激的に感じる色は避けることも提唱している。以上は、アレルギー症状全般に通ずるとのこと。私は、幸い、今年ほとんど症状に悩まされていない。効果のほどを実証できていないのは恐縮だが、試してみるに値する情報としてご提供させていただく。 様々に威力を発揮しているカラーセラピーは、今では、世界中に20を超える流派を擁する。人体のツボに色の光線を当てて整体の分野で使われるアーキパンクチャーから、NASAが開発したテレフォンカード状の磁気色カードを身体に当ててバイオリズムを整えるもの、そして、ヴィッキー・ウォール夫人が創始した、上下2段に分かれたアロマセラピーボトルを選ぶことで心身のバランスを整えるオーラソーマ式カラーセラピーまで様々だ。なかでも、代表的なものとして挙げられるのが、我らが絵画や造形などのアートの分野で色をつかって行われるアートセラピーだ。心癒す色が織りなす絵画がもたらす安らぎは、3時間の睡眠に値するという説もある。 ある御仁いわく、「癒しは、目をあげれば花鳥風月に見いだせる」。風水も、本来、幸運をもたらす色を花のような自然界にある色を基本とする。確かに、 癒しが一大流行となっている昨今、人為的になりがちな“〜セラピー”も少なくない。そんな中、「地球に存在する美の探究」をテーマに、元来、人間が求めている自然(名前に込められた、山海の美しいもの)を堪能してもらいたいというサンカイビがもたらす癒しは希少だ。 次回は、今一度、色の原理に立ち戻って絵画の魅力に迫りたい。 著者: さいとうろさ 上智大学大学院外国語学研究科言語学専攻言語障害コース修了。言語療法や語学教育の他、豊富な海外生活経験を活かし、翻訳や貿易関連の職業に携わる。 |
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