ジャンセン展 〜 アトリエの妖精たち 〜

会期:
2005年 3月24日(木)4月13日(水) 作家詳細
11:00−18:00 日曜休廊 前ページへ
会場: アートスペース・サンカイビ   →地図 Homeへ


 自宅の離れにあるアトリエで、ジャンセンは一日の大半を過ごす。絵筆を握っている時は言うまでもなく、構想を練っている間を含め、アーティストとして存在している時間は必ずアトリエに居る。そこは、家族といえども勝手に立ち入ることは許されていない。単なる仕事場を越えた、もっと神聖な場所であるのだ。

 ジャンセンの場合、特に人物画、静物画に関しては、ほとんどアトリエで制作される。人物を描く時は、必ずモデルをアトリエに呼び、ポーズを取ってもらう。仮面をつけた道化師達をわざわざ呼んだこともある。静物画に描かれている人形や花瓶、雑貨などは、室内に常に飾ってあるものだ。その場所でなければ描かない、いや、描けないと言っても決して過言ではない。

 思うに、アトリエという空間は、画家にとって、作品という子を産み落とすための聖なる産室であるのだろう。自然界と大きく異なる点は、その子達には半永久の命が与えられるということだ。限りある命しか持たない人の子に比べ、それは一種超越的な存在とは言えまいか。さしずめ、アトリエという巨大な繭から羽化した、そう、妖精たちだ。

「バレリーナ」や「少女」など、ジャンセンのアトリエで産声を上げ、外界に放たれた妖精たちは、人々の間を浮遊し続ける。羽の抑揚とともに振り撒かれる燐紛は、幻覚をもたらす。哀愁、思慕、孤独、安堵、苦悩、憧憬・・・、画家がその時に込めた感情が、見る者の心に甦り、それぞれにドラマを見せてくれるだろう。それは自分自身の物語だったり、知っている誰かの話だったりする。そして、心の奥底にしまい込んでいた、あの日の自分やあの日の気持ちを、いとも簡単に引き出してくれるのだ。

 今回は、ジャンセンの画業が成熟を迎え、スタイルが確立された1970年代の作品、特に女性人物画を中心に展示致します。油彩、パステル、デッサンなどオリジナル約20点の予定です。この機会に是非ご高覧頂きますようお願い申し上げます。

    
アートスペース・サンカイビ
 代表: 平田 美智子