篠田桃紅toko shinodaコレクションマップ
篠田桃紅@ザ・キャピトルホテル東急


東京・永田町の「ザ・キャピトルホテル東急」。
2010年10月に隈研吾による設計で改装工事を終え、リニューアルオープンしました。

1963年の東京オリンピックのために設計された元のホテルは、吉田五十八が設計し、旧東京ヒルトンホテルとして始まり、その後1983年から再開発のため2006年に閉館するまでキャピトル東急ホテルとして営業されていました。
ビートルズや3大テノールのプラシド・ドミンゴ、ホセ・カレーラス、ルチアーノ・パヴァロッティといった世界のVIPに愛されてきました。何故か?それは、日本的な景観とホスピタリティとをこのホテルが兼ね備えていたからでしょう。
というのも、立地はもともと北大路魯山人が美食倶楽部「星岡茶寮」を主宰していた土地で、緑豊かな鎮守の森を備えた創建500年の日枝神社に隣接しています。また、日本の国際ホテル黎明期のホテルとして外国人客をもてなしてきた歴史があるのです。
リニューアルしたザ・キャピトルホテル東急も、エントランスは日枝神社と空間を共有し、高層ビルでありながら、地上の雰囲気はきわめてひっそりとしています。
以前の建物に飾られていた日本人によるの芸術作品の多くが、そのまま新しいホテルに引き継がれています。
篠田桃紅が40代に完成させた代表作も例外ではありません。
その作品「無題」は旧ホテルではスイートルームに飾られていましたが、今は1階ロビーに飾られています。
金箔の地に大胆に筆を走らせたこの作品は、1966年に来日し、この部屋に宿泊したビートルズが興味を持ったそうです。
篠田桃紅はホテル支配人から「この作品を書いた筆を売っている場所を教えて欲しい」と連絡を受けたといいます。
ビートルズのメンバーはその店で筆を購入して帰国したとのことです。
そんなエピソードを持つ「無題」と向き合うように、反対側のレセプションには、97歳の篠田が描いた新作「豊」が飾られています。
この新作は、プラチナ箔の地に、昔の中国の文字で“豊”と漆で描いています。
これから、この作品はどんなエピソードを生むのでしょうか・・・。
また、全てはここでご紹介できませんが、ホテル地下3階のバンケットフロア、レストラン、一部の客室でも篠田桃紅作品がご覧いただけます。
館内には他にも勅使河原蒼風の彫刻や、奥野美果のガラス作品など、数々の日本人作家の作品がが配置されています。
また、地下階の柱状の照明スタンドや、地下2階のバンケットフロアの蝶々型のシャンデリアは、日本を代表する照明作家、石井幹子によるものです。
歴史あるこのホテルは、これからも時代とともに生まれ変わってゆくのでしょう。
しかし、日本らしい文化や景観、ホスピタリティはいつまでも引き継がれることを願ってやみません。


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